「風俗は暗い業界じゃない! そこには目標達成のための大きなメリットがある」 風俗業界を卒業したエステ講師の過去と未来 | 後編

菊地さんインタビュー後編

角間惇一郎 (GrowAsPeople代表理事)
前回のインタビューでは、エステ講師、菊池さんの会社員から風俗業界入りしたきっかけ、夜のお仕事時代のお話をうかがいました。今回は、菊池さんがエステ講師になったきっかけや今後の目標などを語っていただきます。

エステ講師:菊地さん
18歳で化粧品会社に入社した後、22歳から夜の世界で働くことに。再び一般企業に転職するも体調を崩したことでお金に困り、28歳で風俗のお仕事を始める。現在は風俗、非風俗の両方でエステ講師として活躍中。

エステの仕事へのきっかけは体の“中”への興味

角間:夜のお仕事にかかわらず「なにをやったらいいのか?」とか、「私はこれからどう生きたらいいのかわからない」とか、「自分に向いている仕事って?」といった悩みを抱えている若者は多いと思います。

菊池さんは、エステ・マッサージという職種にたどり着きましたが、なにがきっかけだったのでしょうか。また、なぜ周囲に応援してもらえたのかをうかがいたいのですが。

菊地:きっかけは18歳で化粧品会社に入った時です。人間の体って食べたものでできています。だから、“外”じゃなくて、“中”が大事だと気付いたんです。体の中に興味をもったことから、体にたずさわる仕事としてエステ・マッサージを続けています。

体って変化していくものだし、「きれいな肌になりたい」「やせたい」など、こうなりたいっていう欲求には終わりがありません。だから、常に目標が変わっていきますね。それで、その時々で変わる目標を友達や外の人に向けて発信できるわけです。

そうしたことをずっと続けていると応援してもらえやすいです。もちろん逆もありますけど……。どんどん発信して、やりたいことを伝えていくのが一番いいと思います。

角間:今の『エステ講師』の仕事に、風俗で働いていた経験が活きていると感じますか?

菊地:自分が経験した悩みや苦労などを実体験として伝えることで、教えている女の子から共感を得られますし、打ち解けやすくなれると思います。会社側の人ではできない女の子同士というか、第三者的な関係性と言いますか。

風俗の経験があったから、先生でありながら友達・仲間のような“斜め上の関係”

風俗の経験があったから、先生でありながら友達・仲間のような“斜め上の関係”

角間:第三者的っていい表現ですね。実はNPO界で人間関係は3パターンあると言われています。ひとつめは、先生や上司、親のような縦の関係。自分より経験とか知見が多い一方、直接縦につながっているから、互いにプレッシャーがかなりある。

ふたつめは横の関係です。友達やネット仲間みたいな気軽でフラットな関係。しかし、そこには縦の差がないので、どちらかが上に引き上げることが困難な関係でもあります。直接的につながってないけれども自分よりは経験がある、直接的ではないから互いの立場を受け入れやすい。それが3つめの“斜め上の関係”です。

菊池さんの今の立ち位置は、夜の業界のキャストさんに対しての斜め上の関係だと感じるのですがいかがですか?

菊地:技術面を磨いていきたいので、先生という立場かもしれないですけども、それだけだとマニュアルどおりにカチッとした状態になってしまいます。そこに私の実体験を交えることで、友達に近い感覚でいたいなって意識はかなりありますので、斜め上の関係ってすっと入ってきますし、そうありたいと思っています。

マッサージの技術を活かし”卒業後のセカンドキャリア”を支援したい

マッサージの技術と”卒業後のセカンドキャリア”を支援したい

角間:風俗業界に対して意見や提案などはありますか?

菊地:風俗業界で働く女性には、年齢を重ねるとお客さんが付く機会が減って、“風俗のその後”を意識させられるようになるという問題があります。そうした支援や社会復帰、ほかの仕事を紹介する組織や団体などがあるといいと思います。

資格支援はそのひとつですし、風俗のその後を考えるようになっても、そうした団体の存在によって安心してお仕事を長く続けられるかなと思います。

角間:単純にサポートという言葉じゃなく、年齢的な理由で“次”を考えたい人が少なからずいるので、そこに対して配慮した仕組みを整えていくべきということですね?

菊地:そうですね。だから、将来は女性の“卒業後のステップ”を支援したいです。風俗が難しくなったときのセカンドキャリア形成について、なにかお手伝いできることがあるかなって。今の私ができることは技術の提供なので、一般のマッサージのお店で講師をさせてもらっていますが。

近い将来は、講師を育てていくことも視野に入れて動きたいなと思っています。マッサージに関わる仕事はだれにとっても有効ではありませんが、興味や関心をもっている人もいると思うので。

風俗という手段で目標達成をするメリットとは?

角間:最後に、現役で風俗のお仕事をされている人たちや相談相手がいなくて不安に思っている人たち、この記事をご覧の方へのメッセージはありますか?

菊地:恋人や結婚、出産などプライベートなことやお仕事の不安は、いろんな人に相談することで、気づきが増え緩和されると思います。第三者の意見を素直に聞くって大事なのかなと。相手は、経験者でもいいですし、経験のない方でも吐き出すってことだけで、気持ちがずいぶんと違ってくると思いますから。

それと、風俗業界そのものは決して暗い業界ではなく、ポジティブな側面もあるということは伝えたいです。やはり向き不向きこそはありますが、目標がある子、目的意識が高い子にとってはマッチしやすことは(いい悪いはさておき)事実かなと。風俗のお仕事は、時間の自由が利きますし、短期で稼げる性質がありますから。

例えば短期間で留学資金を貯めたいという目的で、業界のメリットを最大限に活かし、すぐ卒業していく方がいます。こうした環境こそ業界最大のメリットだと思います。ただ一方で、お金にはとても強い力がともないます。短い時間で得られるとなるとなおのことです。当初の目標を見失わないように働く仕組みは必要ですし、そういった視点をもって働いてもらえればと思っています。

サポータープロフィール

角間 惇一郎

角間 惇一郎

  • GrowAsPeople代表理事

1983年、新潟県生まれ。建築業界で働いていたが、2010年の「大阪二児遺棄事件」に衝撃を受け、夜の世界で働く人の孤立を防ぐ事業を始めたいと思い、脱サラ。2012年、『一般社団法人GrowAsPeople』を設立。東京都荒川区を拠点に活動する。性風俗産業にかかわる女性たちのセカンドキャリア支援、のべ数千人に上る実態調査による統計算出などに取り組む。著書『風俗嬢の見えない孤立』(光文社新書)

この記事はシリーズになっています

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いつかは「卒業」。生涯現役は難しい職種。だからこそ今、精一杯頑張っているはず。皆さんにとってこのシリーズが、卒業へ向けてやるべきこと、卒業した後のことを考える少しの手助けになれば。

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