風俗業界で働く方々の情報やリアルな体験談には、今の社会を考えるためのヒントが詰まっているケースが少なくありません。しかし、取材を受けるということに不慣れな方が大多数であるというのが現実です。
今回、菊池さんが取材を受けられる際、リラックスした環境が必要とのことで、(異例ながら)友人である僕がインタビュアーを務めさせていただくことになりました。彼女の過去の風俗経験から、現在のエステ講師に至るまでのお話をうかがいましたのでお読みいただければ幸いです。
角間惇一郎 (GrowAsPeople代表理事)
- エステ講師:菊地さん
- 18歳で化粧品会社に入社した後、22歳から夜の世界で働くことに。再び一般企業に転職するも体調を崩したことでお金に困り、28歳で風俗のお仕事を始める。現在は風俗、非風俗の両方でエステ講師として活躍中。
ごく普通の社会人から22歳でハプニングバー、28歳で風俗の世界へ
角間:菊池さんは現在、風俗店やエステ店で働く女性に対しての技術指導を行う、『エステ講師』としてお仕事をされているとのことですが、今までのプロフィールを教えていただけますか?
菊地:高校を卒業してすぐ、化粧品会社に入社をしました。4年ほどは社会人として生活していたのですが、22歳の時に遊びに行った渋谷のハプニングバーでアルバイトを始めたことが夜の世界とのかかわりをもったきっかけです。もともとアンダーグラウンドな世界に興味があったもので、遊びに行った勢いそのままにここで働いてみようと。
ただ数年経って、20代後半になり将来のキャリアを意識しました。いわゆる“昼職”に就こうと思い、美容マッサージの仕事を選択しました。ただ正直言って、お給料が少ないわりにはシフトの時間管理が大変で、結局体を壊し入院してしまいました。いよいよお金に困り、風俗で働くことを決めました。28歳の時です。
自分でお店を探して、身体の負荷が少ない店舗を探したつもりだったのですが、実際にはハードな内容のお仕事に就いてしまったことがわかり……。友人に相談したところ、美容業界の経験を活かしやすい風俗エステの仕事を紹介してくれて、ようやく自分に合ったお店を見つけることができました。
夜の業界に中だけでなく外にも相談できる相手がいたから、悩みはほとんどなかった
角間:僕は6年前立ち上げた『GrowAsPeople』という団体で、夜のお仕事をやっている方からの相談、具体的には、「トラブル対応」「税金関連」「卒業・セカンドキャリア」の相談を受けています。
このような経験があるからこそ見えてきたのが、今、“夜の世界の仕事に就いていることそのもの”に困っているというより、立場が明かせないため、悩まれているケースが多いと感じています。ほとんどの人にとって、他人にシェアしにくい立場なことは間違いないので相談しづらい。相談環境という面で菊池さんはどうだったか教えていただけますか?
菊地:私は多分恵まれているほうだったなぁと思います。ハプニングバーで働いていたときから、風俗のお仕事のことは、両親にこそ伝えていませんでしたが、兄弟や友人には共有していました。
ありがたいことに立場を明かしても、だれからも否定されることはなく、むしろサポートしてくれました。それに、打ち明けられる恋人もいましたので、悩みがほとんどなかったですね。
角間:それはいい環境でしたね。では相談相手という面以外で、菊池さんが風俗産業で働いていて困ったなぁということがあれば教えてください。
菊地:最初に困ったことは、指名に関すること全般でした。指名の受け方とか、リピータの作り方とか。これに関しては、同じ待機所にいる女の子になんでも相談しました。「どうやったら指名を取れる?」のような感じですね。もしかしたら珍しいのかなと思いますが、女の子同士の仲がいい職場環境でした。
スタッフの姿勢が風俗業界のイメージを変えた
角間:風俗の仕事をやる前とやってみた後で、気持ちや業界に対してのイメージに変化などはありましたか?
菊地:思っていたより普通だったと言いますか……。昼の仕事とそれほど変わりない環境だと思いました。もちろん、始めてすぐは緊張してましたが。人間関係が怖い世界ではないかとか、強要がないかとか。
でも、ドラマとか映画とかで見るような無理やり仕事をさせられるとかはまるでなく、むしろスタッフさんも周りの女の子も「自分のペースでやってください」というスタンスだったことに驚きを覚えました。
それよりも意識していたのはお金のことです。1日に2回給料が出ていたのですが、この感覚に慣れてしまったら危ないんじゃないかって……かなり思いました。ほかの業界ではありえないことですから。だから、貯金という目標を自ら立てることで、お金を使うことよりも、貯めることに向かってひたすら働く状態にし、お金のことでブレないようにしようと考えていました。
年齢の悩みは仕事関係ない。解決にはSNSも
角間:よく聞こえてくる話なので質問させてください。風俗で働いてる際、ご自身の年齢のことは気になっていましたか?
菊地:女性って体の面で悩むことが多いですが、妊娠、出産を考えるとどうしてもリミットがあります。だから、ほとんどの女性は33歳っていう数字を強く意識すると思います。同じように働くことについても33歳前後で悩むことは多いのではないでしょうか?
ただこの年齢に対するモヤモヤした感じは職種で変わることはないと思います。実際私が一般企業で働いてた時でも年齢についての変化に悩んでいましたので。女性が抱える共通の問題なのでしょうね。また恋人の存在も大きく関係してくるとも思っています。
角間:女性特有といえる体についての悩みについても、相談をしたくても今の立場を言うことができなくて、ふさぎ込んでしまうケースが多いと聞きます。ただ、インターネットの発達によって情報共有が進んだことで解決につながったケースがよくあると聞きます。共有は力なのでしょう。
話を戻して、夜のお仕事をしていることを親しい人に伝えないケースは多いかと思いますが、やはりだれかに言っていくべきだと思いますか?
菊地:Twitterのような、ゆるくつながれるSNSという手段を利用するのがいいのではないかと。あとは『みっけStory/みっけストーリー』のようなメディアができることで、「同じ仲間がいるんだ」ということが伝わればいいと思います。本名を明かさなくても、同じ思い同じような立場の人がいるっていうことがわかりますし、メディア化すればほかの方の質問や悩みがどう解決したかが見れるので。
人間関係に恵まれ、かつ、しっかり目標を立てることで前向きに風俗の仕事を続けることができた菊池さん。インタビューの後編では、エステ講師を始めるきっかけや今後の目標についてうかがっていきます。