風俗を卒業して税理士を目指す! 将来は簿記教室で資格支援がしたい|【前編】

風俗を卒業して税理士を目指す! 将来は簿記教室で資格支援がしたい|【前編】

風俗の世界で働いていた女性を中心に、私、GrowAsPeople代表理事の角間惇一郎が対談をする本企画。
今回は、税理士を目指しているHさんに、風俗を始めたきっかけや風俗を卒業したあとのセカンドキャリアについてお話しを伺ってみました。

Hさんプロフィール画像
Hさん
18歳からオナクラやイメクラに勤めて風俗の世界へ。アルバイト先のスーパーの店長から受けたアドバイスをきっかけに簿記の資格を取得。さらに猛勉強の末、税理士試験の受験資格を得て、上京。現在は税理士を目指し、税理士事務所に勤務している。

コミュニケーションが苦手だからキャバクラではなく風俗を選んだ

角間:夜の仕事を始めたきっかけや、どういう働き方をしていたのかを教えてください。

Hさん:私の場合は、風俗を生活の糧にするというわけではなく、副収入的なものでやっていて、期間としては結構短かったんです。18歳ころからオナクラに入店して、イメクラを1年ぐらいという感じです。

角間:在籍するお店を替える機会があったようですが、きっかけはなんでしたか。

Hさん:どうして風俗かというと、大きな理由は、コミュニケーションがすごく苦手だからなんです。キャバクラは、話をするのがお仕事じゃないですか? だから、私には無理だなと思って、コミュニケーションをできるだけとらなくてよさそうな風俗を選択しました。それと、お客さんがやさしい所がいいと思って、大阪の風俗で働きだしたんです。でも、お客さんの関西弁が少し怖いなって感じてしまって。その次は、オタク向けの風俗店に行きましたが、働くのがつらくなって辞めました。私にとって風俗は生活の基盤ではなかったので、辞めやすかったというのもありますが、辞めたり入ったりというのを繰り返していました。

角間:「辞めた、戻った」の定義ってどう考えられていました?

Hさん:難しいですね……。とりあえず、風俗なしで生活基盤が築けて、それが持続するであろうという見込みができる、ということでしょうか。私の場合は、メンタル的な理由で風俗に行ったというのがすごく大きいのですが、そういう意味で今、メンタルが弱くなっても、もう戻らないという感じですかね。

角間:なるほど。昼のお仕事がしんどいなと思ったときに、夜のお仕事はメインにもサブにもなる仕事だから、出たり入ったりすることができる。でも、昼と夜の仕事で収入などのギャップを感じますよね。このギャップに衝撃や不安を受けて、「やっぱり、ちょっとだけ夜の仕事に戻ろうかな」とならないことが、「辞めた」ということだと僕は考えます。

「あなたはもっとできる人だから」と言われて簿記に目覚める

アルバイト先の店長から言われた言葉が人生の岐路に

角間:夜のお仕事をしてきて、いくつかの理由が積み重なってきて、ちょっと違うキャリアを考えようと思ったきっかけはなんだったですか。

Hさん:夜の仕事をしている時、日中はスーパーでアルバイトをしていたのですが、職場の皆さんがとても良くしてくださったんです。私、高校を中退してフリーターだったんですけど、店長さんから「そのままだったら人生がもったいないよ。あなたはもっとできる人だから、もう1回やり直しなさい」と言われて。

角間:店長さんは女性ですか?

Hさん:男性です。「じゃ、そこから頑張るか!」と思って、資格の勉強を始めて。

角間:いきなり、資格の勉強を始めたのですか。

Hさん:店長さんから「とりあえずなにかやれ。資格だ!」と。「そうか、資格か!」と思って、すぐに本屋さんに行って、目に付いたのが「簿記」だったので教科書を買いました。「資格と言えば簿記かな」というのがなんとなくあって。

角間:本屋さんによく簿記の専門書が平積みされているからですか?

Hさん:そうそう。アルバイト先のスーパーには、商業高校卒の人が多かったんですよ。だから、みんな簿記の資格を持ってて。

角間:「資格を取ればスーパーの役に立つかも」といった理由もありましたか。

Hさん:ありました。実は、アルバイト先のスーパーがつぶれかけていたんで(笑)。

角間:夜の仕事をしていることは、スーパーの人たちには伝えていなかったんですよね。

Hさん:言っている人もいました。同い年の子たちとは仲が良かったので、「(風俗を)やっていたことがあるよ」というふうな言い方はしていました。

角間:簿記の勉強を思い立ってから、どうなりましたか。

Hさん:2か月勉強して、簿記2級を取りました。普通は3級から入るパターンが多いんですけど、飛ばしちゃって。あとアルバイト先で社内コンクールがあって、社員さんの前でお話しする機会があったんです。そこで、簿記を使ってお話をさせていただいたんですよ。「うちのスーパー、まだつぶれません。頑張ります!」って。

角間:すごい! プレゼンしたわけですね。

Hさん:そしたら、百数店舗中、私のアルバイト先がそのコンクールで1位を取って、周りがチヤホヤしてくれて(笑)。つぶれそうな店だったんですけど、社長が経営を立て直す一環として大改装してくれたんですよ。

角間:Hさんがいるからですか?

Hさん:1位を取ったご褒美(笑)。だから、私、社長にすごく感謝して、「ここで一生頑張ります」ってなったんですけど、周りの方からは、「もっと別の道があるんじゃないの」って言っていただいて。もっと自分の可能性を試してみたいと思って、勉強を続けて、全経簿記の上級という資格を取ったんですね。これを取ると、税理士試験を受ける資格が付与されるんです。「経簿記の上級の資格を取ったし、税理士試験の受験資格も得られた。じゃ、東京に出たい」と思って。もっと大きいところで、自分の力を試したいと思って、上京しました。

自分の可能性を試してみたいと臨んだ全経簿記上級の資格を取得 そして、上京、税理士を目指す

不安を抱えながら上京し、税理士事務所に応募した

角間:何歳のときですか。

Hさん:25歳くらいです。それで、税理士事務所に応募しました。私、高校は出ているんですけど通信制なので、採用されないかなと思ったんです。だから、税理士事務所に何社か行くつもりだったけど、1社目で採用されました。

角間:就職活動はノウハウをもってやったわけではなく、ノリですか。

Hさん:ノリで。でも、ハローワークに何度か行って、履歴書の書き方などを教えていただきました。現在の勤め先は、その時に採用された事務所です。


素直にアドバイスを受け入れ、行動に移すことによって人生を変えていったHさん。インタビューの後編は、Hさんが勉強をするモチベーションや時間の作り方などを伺っていきます。

サポータープロフィール

角間 惇一郎

角間 惇一郎

  • GrowAsPeople代表理事

1983年、新潟県生まれ。建築業界で働いていたが、2010年の「大阪二児遺棄事件」に衝撃を受け、夜の世界で働く人の孤立を防ぐ事業を始めたいと思い、脱サラ。2012年、『一般社団法人GrowAsPeople』を設立。東京都荒川区を拠点に活動する。性風俗産業にかかわる女性たちのセカンドキャリア支援、のべ数千人に上る実態調査による統計算出などに取り組む。著書『風俗嬢の見えない孤立』(光文社新書)

この記事はシリーズになっています

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いつかは「卒業」。生涯現役は難しい職種。だからこそ今、精一杯頑張っているはず。皆さんにとってこのシリーズが、卒業へ向けてやるべきこと、卒業した後のことを考える少しの手助けになれば。

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