Y美の活躍、J子の憂うつ
デリヘル店のオーナーをしていた僕は、ほぼ同時期にY美とJ子というふたりの女性の面接をしました。共に25歳で元OL、美形で細身のグラマー。彼女たちの外見的なレベルや素材としての魅力は甲乙つけ難いですが、表情や口数が対照的でした。
J子は、ハキハキしていて明るく、社交的な雰囲気でした。それに比べてY美は、極端に無口で、質問には最小限の言葉しか発せず、表情が豊かとは言い難いのです。
そのたどたどしい笑顔に、僕はY美にメンタル面の弱さを感じ、先行きを心配しました。一方、J子には、一片の不安も感じませんでした。面接当初のふたりは、まるで太陽と月のようなの印象でした。
ところが、いざふたを開けてみると、Y美は、あっという間にリピーターを数多くもつようになり、J子は数か月で行き詰ってしまったのです。
なぜ、外見も年齢もそう変わらないふたりに、これほどの差ができてしまったのでしょう?
稼げないJ子の悪い癖
僕には、J子が稼げない理由について確信がありました。それは、彼女の「のろけ話」をする癖です。彼女は待機所や事務所で彼とのプリクラを見せびらかし、自分がいかに彼とラブラブなのかを熱弁するのです。「彼と温泉行くんです」「明日は私の誕生日で、彼とお出掛けするんです」といった具合です。
25歳の無邪気な女の子として見れば、事あるごとにのろけるJ子は「普通」です。だから、それが事務所や待機所だけでなら、僕は静観するつもりでした。
しかし、彼女は自分に付いたお客さんにも同じノリで接しているらしく、実際にお客さんから罵倒的なアンケートが何通かありました(笑)。さすがに、それはオーナーとして見過ごすことができません。僕は意を決して、J子に注意をしました。無論、「超」優しくです。





J子の彼氏はいわゆる遊び人で、彼女は完全な金づるでした。風俗業界で望まぬ接客をしてまで必死に稼ぎ、そのお金を「彼氏」に注ぎこむJ子は、きっと「のろけ話をすることでメンタルのバランスを保っていた」のでしょう。
それに気付いていた僕は、あえて厳しいことを言わず、注意だけをしました。
風俗店のリピーターの心理
風俗店のお客さんの多くは、「疑似恋愛的な要素」を求めています。何度も特定の女の子を指名するリピーターは、「愛する彼女に会いに行く」ような精神状態かもしれません。
そのため、リピーターの中には、誕生日やクリスマスに差し入れのケーキやプレゼントを持ってきてくれる人が多いと聞きます。彼らは、女の子が自分を愛してくれるわけではないことなど百も承知であり、妻子や彼女がいる人も中にはいるでしょう。決して本気ではないが、かと言って、ふざけているわけでもありません。
つまり、お客側は「まじめに」風俗を楽しもうとしているのです。そして、男たちは限られたお小遣いから風俗遊びをする費用を捻出するわけです。
にもかかわらず、「一生懸命さ」のない、「嫌々感」さえある、しかも彼氏ののろけ話をする女の子が現れたら、お客さんはどう思うでしょうか? いくら相手が美人でグラマー、かつ明るい子でも、お客さんは「風俗に挑む姿勢のない子」を相手にするほど(そんな子にお金を出すほど)甘くはありません。
リピーターを数多くもつY美の姿勢
Y美は、確かに口下手で不器用でしたが、風俗をきちんと「プロの仕事」としてとらえ、リピーターたちの支持を得たのです。そして、お店のトップとして稼ぎ始めました。
僕はY美から次の「稼げるコツ」を聞きました。それから、僕のお店の新人さんにそれらを必ず言って聞かせるようにしました。
- プライベートは明かさない
- 一緒にいる時は業務的な雰囲気を出さず、恋人に徹する
- お客さんの望むような時間をできる限り演出する
- 気配り・目配り・心配りを忘れない
同じ年齢、近いレベルのルックスやスタイルをもつY美とJ子に差が付くのは、必然ですよね。「自分に恋人がいないもんだから、私ののろけ話にひがんでる」とお客を馬鹿にするJ子とY美は、視線の高さがまったく違います。
視線の高さが違えば、見える景色はおのずと違ってきます。次第にY美の暮らしは目に見えて豊かになり始めました。
それをうらやむJ子に、私は「姿勢を変えれば君もトップになる素質をもっている」と何度か話しました。しかし、彼女はかたくなに自分のスタイルを変えようとせず、お店を去りました。
その後、いくつものお店のホームページで彼女の姿を見掛けましたが、ほどなくして大阪の風俗業界で見なくなりました。今も幸せに、元気にやっていることを祈るばかりです。
稼いでいる子から話を聞くのが一番
今、皆さんの周りに、「何であの子が私より稼げるわけっ!?」と思うような目障りな同僚さんはいませんか?(笑)。もし、いるのなら、それはあなたにとってステップアップする大チャンスです!
変なプライドや凝り固まったスタイルは忘れて、その子の言葉に耳を傾けてみてください。意外と、目からうろこが落ちるような秘訣が聞けるかもしれません。
そういえば、いつかY美は、リピーターを増やすテクニックを新人にこう教えていました。
お客さんには誕生日を聞くのよ。そして、「次は誕生日に来てください。プレゼント、用意してるから」ってその場で日にちをメモするの。それだけで、もう1度来てくれる確率は上がるからね。プレゼント? 私、服飾関係の問屋さんに勤めてる知り合いがいて、男物のハンカチとか靴下とか大量に持ってるの(笑)。それで対応してる
オーナーには不愛想なのに、新人には優しいのね、Y美ちゃん(笑)。