性感染症の検査・治療に取り組んでいるだけでなく、性感染症を予防できる新たな薬の開発・導入を目指す『予防会』。
今まで性病を予防するうえで、最も効果が高いのはコンドームでした。
しかし、近い将来、予防会 新宿サテライトクリニックの北岡院長と、早稲田大学の研究機構の共同開発により、ファージを使った性感染症(淋菌)の予防薬が発売される見込みとのこと!
現在「予防に有効」と言われているものには、デマも多く、医師ですら間違った発信をしているケースもあるそう。
お話しをしていただいたのは、研究一筋、感染症を専門とする北岡院長。
風俗業界で働く皆さんに予防薬についての正しい知識をお伝えするとともに、現在の開発状況をお伝えします。
- 予防会 新宿サテライトクリニック院長
北岡一樹 - 三重大学医学部卒(2013年)、名古屋大学大学院博士(医学)取得。
早稲田大学の招聘研究員兼、予防会新宿サテライトクリニックの院長を務めている。
臨床と研究の両面に精通した希少な医師として、性感染症予防製品の開発を進め、2024年「株式会社KMPhage」起業。
専門:性器感染症予防(希少なカンジダ・細菌性膣症予防施行)
研究:薬剤耐性菌、ファージ、性器感染症における基礎研究
ファージを利用した予防薬?そもそもファージって何?
――先生は淋菌の予防薬開発に着手され、世に薬を送り出すめどがついたそうですね。
販売の目安は早ければ2年後くらい。商品としては、ローションと膣剤。今は淋菌だけですが、将来的には、クラミジアや梅毒なども開発していきたいですね。
――その予防薬は「ファージ(ウイルス)」を利用したものだとか。そもそも「ファージ」とは何なのでしょうか?
ファージとは、端的にいうと細菌だけを倒すウイルスのこと。
ウイルスというと「風邪のウイルス」のように、人に感染する悪いイメージですが、ファージは細菌だけを殺し、人には無害のウイルス。私が早稲田大学との共同研究で発見したファージは、淋菌だけをピンポイントで死滅させるものです。
地球上にある生体のなかで一番多いのはウイルス。腸、皮膚、さまざまなところにファージは存在していて、ウイルスのなかで最も多いのはファージなんですよ。
――淋菌だけを死滅させるファージ!それを先生が発見したなんてすごいですね。元々こういった研究をされていたとか。
研修医のあと、内科を経てから細菌学の研究所に入り、研究者になりました。
研究と並行し、予防会に入職したのは、7年前。性感染症も、感染症の一種。自分の研究経験と知識を活かせるので。
――元々専門とする分野なら、さらに安心感ありますね。そのファージは、淋菌の予防と治療、両方に使えるのですか?
はい、その通りです。ファージは、予防だけでなく、治療薬としてもメリットが大きいんですよ。
現在、治療に関しては抗生物質を使用しているのですが、広い範囲で効く一方で、逆にいえば、いろんな菌に一気に効いてしまうんですね。
ということは、身体の中にある常在菌(本来無害な菌)までを殺してしまう。さらに強い分、腎臓・肝臓に負担がかかります。
その点、ファージは特定の細菌だけを死滅させるので身体への負担が少ない治療薬で、かなり注目が高まってきているんです。
――抗生物質は治療効果も高いけれど、リスクがあるということですね。
現在、他のクリニックなどで、すでに予防薬が販売されているという話も聞いたことがありますが。
それに関しては、間違えた情報が流れている事もあるので、安易な判断は危険なんですよ。
正しいエビデンス(根拠)がないものを「効果的」と断定する医師も見受けられます。
なので、信頼できる医師に相談するか、情報を見極めることが重要です。
――ではどの段階で「効果的」だと断言できるのでしょうか?
最新のエビデンスを結集した電子媒体で「UpToDate®」というものがあります。これは、世界中の研究結果を集約した、最も信頼性のあるガイドラインです。
この「UpToDate」によると、HIVには予防薬が存在します。あるにはあるのですが、月8万円くらいと高額です。
またクラミジアや梅毒の予防薬として「ドキシペップ」という薬が出てきましたが、元々は治療に使われていた抗生物質。
これを性行為後に服用することで、7割くらい防げると言われていて、巷ではバンバン出回っています。
しかし、ここからが重要。
「予防薬としてのドキシペップ」は、エビデンスとして異性間では認められておらず、あくまでも「男性間」としか認められていないんですよ。男性間での予防効果として約7割。異性間のエビデンスはなしです。
北岡院長は感染症の専門家。デリケートゾーンの悩みもお任せです!
――ということは効果がない?
「ある程度の効果が見込めそうだ」と判断すれば、エビデンス外のものを処方してもいいと思うんですよ。
ただ、あたかも確実に効果があるような言い方をするのが危険です。
当クリニックにも、風俗従事者の方が来て「ドキシペップを処方してください。これ、めちゃくちゃ効くんですよね」と言われることがあるんです。
私も処方することはありますが「エビデンスはない」とはっきり伝えています。
――でも、医師がそういう危機感を持たずに処方するのは怖いですね。
効果の可能性すら漠然とした状態なのに、正しい情報を伝えず、SNSで発信、クリニックで処方している医師も多いんですよ。
実はエビデンス不十分なことを理解しているのに、金儲けのために売っているのでは、と思うこともあります(苦笑)。
ファージを使った薬はメリットばかり!
――先生が発見したファージを予防薬として利用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
安全・安価
現在、先述したように、性感染症を確実に予防する薬はなく、治療の際は抗生物質を使うケースがほとんどです。
抗生物質は、とても強い薬。人が元々もっている常在菌や細胞組織に影響を与えてしまい、不妊の要因にもなり得ます。かつ、人間が薬への耐性ができてしまい、以前は3、4種あった薬も今は1、2種類。薬自体が効かなくなってきているのです。数十年後には効く薬がなくなると言われているんですよ。
このファージは、元々身体の中にある菌を使うため、身体への影響は全くありませんし、特定の細菌のみを標的とします。
今考えている薬の形態は膣剤とローション。局所投与になるので、飲むわけではない。内臓への負担もないですし、元々ピンポイントにしか効かないこともあり、安全です。
さらに培養していくことが用意なウイルスなので、安価での提供が可能なんです。
着用不要
現在、最も性感染症の予防に効果的なのは、コンドーム。しかし、性交渉前に正しく装着した場合でも、予防効果は72%と言われています。
しかし、粘膜接触で感染するため、感染を防ぐには、確実に粘膜が触れないよう、プレイ前から装着をする必要があります。
これって、風俗で働く方にとっては難しいですよね。
コンドームと比較し、ファージは着用の手間を伴わないことと、事前・事後どちらでも使用ができることがメリットです。しかも培養が容易なので、安価で提供できるわけです。
汎用性が高い
インフルエンザやコロナなど、予防の一環として使用する「ワクチン。これは、それぞれひとつの疾患にしか対応できません。
しかし、ファージは、元々体内にあるものを使用するので、可能性は無限。うまく培養できれば、さまざまな疾患にピンポイントで効く予防薬を作ることが出来ます。
――なるほど。ちなみに、最初に淋菌の予防薬に着手した理由は何だったのでしょう?
予防会に来る方で最も多いのはクラミジアが7割。その次が淋菌で2割くらい。
その中で淋菌に着手したのは、最も培養がしやすかったこともありますが、淋菌は病原性が強く、不妊になりやすい病気でもあるからです。
さらに、淋菌は深刻な薬剤耐性菌(抗菌薬が効きにくい細菌)。数十年後には効く薬がなくなると言われているので、いち早く実現したかったというのもあります。
――開発を心待ちにする人も多そうですね。
慎重に安全性の確認を行いつつ、2026年の商品化を目指しています。
最初は淋菌。その後はクラミジアや梅毒の予防薬も開発していきたいですね。
販売が実現すれば、検査と治療の予防会から、名称どおり、予防もできる予防会になるんですよ。
――予防会から予防薬ができるなんて、素晴らしいですね!最後に、先生の夢を教えてください。
大きな夢ですが、世界中から性病を予防することです。
性病に感染してしまうと、その影響で不妊になったり、子どもに障害を与えてしまうこともあるんです。
子どもたちの明るい未来のためにも、研究・開発を続けて行こうと思います。
https://yoboukai.co.jp/article/
性感染症の検査、治療を受けるなら『予防会』
『予防会』は、性感染症予防と蔓延防止に真剣な先生ばかり。風俗従事者への「偏見」も一切なく、とても親身になって相談に乗ってくれます。風俗で安心安全に働くために、信頼性と明るさを兼ね備えたクリニックを「かかりつけ医」に持つことをオススメします☆
店舗関係者の方へ
予防会は東京、神奈川、福岡、大阪と、全国に9つのクリニックを運営して性感染症の「外来検査」を行っています。
担当医師が直接店舗に訪問し検査を行う「出張検診」や、どこにいても手軽に自分で検査できる「郵送検査」など、働く女性が検査しやすい方法が用意されています。
外来検査、出張検診、郵送検査、いずれも団体割引で受けていただけるとのこと。すべての検査結果は、WEB上で手軽に簡単に確認することができるので、とっても便利。団体割引や、詳しいサービス内容を聞いてみたい店舗関係者の方は、ぜひお気軽に問合せをしてみてくださいね!