2020年12月にオープンした吉原『ヴェルサイユ』。コロナ禍で「夜の街」の灯りは消え、風俗業界も大打撃を受けていた時期だった。
統括の関さんは、以前吉原の有名店『女帝』の店長を務めていた方。「どんな環境下であっても、ヴェルサイユを成功させる」。そんな強い意志があった。
わずか2年弱で、またたく間に吉原を代表する高級店のひとつとなった同店。その理由のひとつに、風俗講師グループ「ヒメクリ」の講習がある。
今や超人気講師グループとなった『Hime’screate(ヒメズクリエイト:通称ヒメクリ)』。個人講習は、予約受け入れ時間と同時に即完売。オープン当初、まだ講師として駆け出しだったさくらさんを外部講師として招き入れ、技術、接客スキル、時には悩み相談からメンタルケアまでを一任。
何といっても、驚きなのが、在籍キャストは、レベルに合わせ、ヒメクリ講習員の講習を“無料で”受けることができるのだ。しかも月に3枠も!(希望があればそれ以上でも)
『ヴェルサイユ』にとってヒメクリの存在とは?
統括の関さん、そして同店の人気キャストである滝ゆりさん、かんなさんのおふたりに、講習で得たもの、お店の魅力などを伺った。
まずはVersailles(ヴェルサイユ)統括、関さんより
接客が上手になるには、男性につくしかないんです。数をこなして経験を積む。これしかない。
コロナの真っ只中にお店がオープン。風俗業界もどん底。
そんな中で、うちに入店してくれた女の子たちは、正直、他店で鳴かず飛ばずの子も多かった。だって売れっ子なら、コロナ禍でわざわざ店を動く必要ないじゃないですか。
前の在籍店からお客様を引っ張って来ることもできないし、まして新規のお客様がこないのに、接客する機会がない。
待機が多くなれば不満ばかりが口に出て、モチベーションは下がる一方。
「コロナ禍だから暇だよね」ではダメ。お客様が戻ってきた時に、満足のいく接客が提供できないんですよ。
だったら練習をさせてあげようと。
以前、自分が店長を務めていた女帝に「滝ゆり」さんも在籍していました。伸び悩んでいた彼女に接客の課題を挙げ、改善に向け取り組んでいたのですが、私が辞めることになって。
『ヴェルサイユ』をオープンさせて少し経った頃、ゆりさんから連絡があったんですよ。私が辞めてしまったこともあり、今後の行く先を「どうしよう」って。
でも、「今のまま残ったほうが稼げる」と伝えました。人気店は常連のお客様が多く、コロナ禍でも会いに来てくれる方はいらっしゃいます。彼女のことを考えると、当然、引き抜くなどということは、できませんでした。
その時に、ゆりさんがヒメクリのさくら先生を自ら探し、講習を受け、成長を感じていたと聞きました。
嬉しくもあり、ほっとしたのもあり。
ちょうど講師を探していたので、紹介してもらったんです。まださくら先生は、講師になりたての頃でした。
ヒメクリを外部講師として月数十枠を確保し、在籍の女の子は無料で講習を受けられるようにしました。
すると思ったとおり、お客様と接しなくても技術力があがり、気持ちの面でも意識が変わってきたんです。
しっかりと寄り添えるから、新人の成長速度がものすごく速い
「コロナ禍の今、広告を打っても無駄」と言われていても、広告に多額の予算をかけました。
次第に集客も増え、お客様の満足度も上がり、何よりも女の子たちが楽しく前向きに働いてくれる店に成長してきました。
正直、接客レベルは高いと思います。先輩の技術を見て、私には無理だと辞めていく子も多いです。
でも、『ヴェルサイユ』こそ、未経験の子に向いていると思うんですよ。
人気講師の講習が「無料」というのもなかなかないと思いますが、本来、接客のすべてを相談できる人って、お店に何人いますか?
男性の私は、課題を見つけ、アドバイスはできても、実際に接客はしていません。技術を実際に見てくれて、接客の相談もできる人がいるというのは、本当に大きいと思うんです。
ヒメクリの先生方が読み取る「女の子の癖、特徴、課題」が、自分の考えと同じなのは驚きました。以心伝心しているというか。安心してお任せできるんですよ。
課題に対してしっかりサポートしていくと、女の子の成長速度がものすごく速いんです。
自分の分身が、ふたり出来た、みたいな感覚ですね(笑)
私が女の子に残してあげたいのは、技術。
せっかく稼いだお金を、全部使っちゃう子って多いじゃないですか。「風俗を辞めたら、お金は全然残っていなかった」みたいな。
うちは、講習を受けてもらうと、項目を明記した合格通知を出しています。特にそれが何かの資格に役立つわけではありません。
でも、いつかまた仕事に戻りたいと思った時「自分はこれだけの技術を持っているんだ。いつでも稼げる技術が身についているんだ」という自信につなげて欲しいんです。
お金は残らなくても、技術は残ります。講習を受ける受けないは自由。でも、学ぶ機会はいくらでも与えてあげたいと思いますね。
未経験の子を育て上げるための、労力と時間は、相当なものです。それが、ふたりに加わっていただき、自分の負担が軽減されました。だから、店舗をもっとよくするための施策に時間を割けるようになったんです。
まだまだこれからですが、業界を盛り上げるために本気でやっていきます。
過去の自分を越えなくてはならない。そのためには、女の子が気持ちよく働ける店づくりにこだわっていきたいですね。
- さくらから見た「関さん」
- 女の子に対して「自分が出来る事をしてあげたい」という、素敵な思いを持っている方。女の子がお仕事をしやすくなるようにこちらが提案した事をすぐに実行してくださったり、講習も無理強いではなく、希望する女の子だけ。逆に講習を受けたい子には、何度も受けてもらえるような環境を作っている優しさがあります。
- すみれから見た「関さん」
- 初めてお会いした関さんは、女の子にとって何がいいかを常に考えている方だなという印象でした。そして、今でもその印象のまま、日々女の子の変化を気にされていて、どうしたら良くなるかを考えていらっしゃいます。私自身、女の子たちが楽しくお仕事をして、結果出せるお手伝いをさせて貰えて光栄だなと思っています。
キャスト【滝ゆり】
- 滝ゆり
- 東京都出身。大学卒業後、就職したが、奨学金の返済を抱えており、スカウトの誘いで川崎の高級ソープに入店。その後、吉原『女帝』へ。コロナ禍で集客が減り、のらりくらりやってきた自分の接客スタイルを反省し、ヒメクリさくらさんの講習を受ける。その後、『ヴェルサイユ』オープンからしばらくして、自身も信頼していた関さんを追う形で移籍。講師のさくらさんをお店に紹介し、誰よりも長くさくらさんと関わってきた女の子。ぶつかりあい、悔しくて泣いた日々も今ではいい思い出なのだとか。13年間、新体操を習っていたため、柔軟性は抜群。
「もっと楽しんでいいんだよ」の一言で心が解放された
――講習を受けようと思ったきっかけは?
以前勤めたいたお店に在籍中、さくら先生の個人講習を受けたんです。きっかけは、コロナ禍でお客様が減り、「このままではダメだ。何かを変えなくては」と思って。最初は沙也加先生の講習を受けたかったのですが、予約が数か月待ち。
そんな時、Twitterで沙也加さんの教え子さんが、講師をされていると知り、失礼ながら最初は「まぁ、この先生でいいか」と(笑)
――実際に受けてみていかがでしたか?
「またこの先生に会いたい、教えてほしい」、って素直に思いましたね。褒めてもらえたことで自信がつきました。
――さくら先生を『ヴェルサイユ』に紹介したのは、ゆりさんだとか。
そうなんです。関さんから「講師を探している」と聞いたので、さくら先生を紹介しました。まだ前の店に在籍していたのですが、その後、私も関さんのいる『ヴェルサイユ』へ。今はありがたいことに、お店で講習を受けさせていただいています。
――ゆりさんは、講習を受けてご自身でどのように変化したと思いますか?
気持ちの面で大きく変わりました。今までは「高級店なんだから、完璧でないといけない」って思っていたんです。
「常に敬語、技術で満足いただき、接客はソツなく」みたいな。
でも、それってお客様も楽しくないし、実際に私も「作り笑顔」だったと思います。
さくら先生から「ゆりちゃん自身が楽しんだらいいんだよ」と言われたことが、衝撃で。そこからは、覚えた技術を試す時にも、お客様に「習ってきたことを試させてほしい」と、素直に言えるようになりました。
――今までは、完璧を求めていただけに、そんなことは言えなかったわけですよね。
はい。素直になることで、お客様も「もっとこうしたほうがいいかもね」と、ダメ出しもしてくれるようになったんです(笑)。お客様も私も、笑顔の時間が増え、楽しく接客ができるようになったので「意識せずとも、いつの間にかリピーターが増えていた」という状況になりました。
「さくら先生に会いたくない」。核心を突かれ、悔しくて泣いた日も
――さくらさんから「ゆりちゃんとはバチバチやったこともある」と聞きましたが(笑)
そうなんです。合同講習会の時、ちょっとしたことで、私が機嫌を損ねたことがあって。おそらく態度に出ていたのだと思います。さくら先生に「頑張っている女の子もいるのに、その態度は周りに失礼。やる気がないなら講習に参加しなくていい」と本気で怒られたんです。
――ゆりさんだって頑張っていたわけですよね?
はい。だから、なんでそんなことを言われなくちゃいけないの?と。関さんに「さくら先生が大嫌い。もう会いたくない」と泣きつきました。
でも、今までお世話になった先生だし、こんなモヤモヤしたまま決別したくないと、話す時間を設けてもらったんです。
――そこではどんな話を?
「ゆりちゃんは、いつもいい子でいようとする。嫌なら嫌、できないならできないと言ってほしい。ゆりちゃんの考えていることがわからないよ」と言われたんです。
図星でした。幼い頃、厳しい家庭に育ち、姉が?れれるのを見て、どう振舞えば波風を立てないかを考えるような子だったんです。
――接客でも「高級店らしく完璧」を求めていたし、普段も自分の本心を出さないようになってしまっていたのですね。
さくら先生は、言いににくいことも、心を鬼にして言ってくれたんですよね。
実際、自分が伸び悩んでいた時で、基本的な接客も「慣れ」になっていたな、と。頑張っているでなく、「頑張っているつもり」だったことも自覚しました。
そこからは、さらにさくら先生をリスペクトするようになりましたね。今ではあの言い合いも、楽しい過去の笑い話です(笑)
――最後に、ゆりさんの今後の夢を聞かせてください。
新人の子たちにいろいろと教えられる、お店の講習員になることです。
――おぉ!それはすごい!いつくらいをめどに?
ある程度は決めていますが具体的にはまだです。でも、さくら先生にそれを伝えた時に言われたのが「講師になるには実績が伴わないとダメ。立ち止まっている時間はないよ」って。
さくら先生は技術だけでなく、様々なことを教えてくれます。「例えば〇年後に講師になるには?」を一緒に考え、集客するための現状把握、分析をして、実績を積むための指名本数を決めて。
――なんだかワクワクしますね。
現役の今は、高級店ならではの技術やルックス売りだけではなく、「楽しむ」滝ゆりの本質を見てもらいたいです。
そして、講師という目標に向けて、這ってでも前に進んでいきます!
- さくらから見た「ゆりちゃん」
- 所作、言葉遣いも含め、女性らしさが群を抜いているゆりちゃん。以前は、完璧主義ゆえ、打たれ弱い一面もありましたが、今ではメンタルが良い意味で強くなりました。人と比べるのではなく、自分に負けない向上心が素晴らしいです。さらに、楽しんで仕事ができるようになり、自分の殻を破った感じですね。そこからは、ますます輝きが増してきました。
キャスト【かんな】
- かんな
- 東北出身。大学卒業後の就職。薄給だったこともあり、好きなバンドのライブに行くための資金稼ぎとして、風俗(デリヘル)でアルバイト。その後、本業を退職し、吉原ソープが専業となる。前の在籍店では講習がなく、以前からさくら先生の個人講習を受講していたそう。フランスへの留学経験があり、日常会話も問題なし。『ヴェルサイユ』でのランクアップが達成したら、フランス語検定の上位資格や、宅建などの資格取得もしていきたいと語る「学ぶこと」が大好きな女の子。
どうせやるなら楽しく。頑張って結果を出せば、なお楽しい。
――――講習を受けようと思ったきっかけを教えてください。
『ヴェルサイユ』に入店する前に、自分でさくら先生を探しました。以前の在籍店では、マ〇トの講習がなくて、入店時に「二輪車に入れば自然と覚えるよ」と言われたんです。確かに基本は覚えられたのですが、二輪車だけでは限界があるなと。
――限界とは、どのようなところで感じたのですか?
二輪は女の子がふたりいるので、何となく役割も決まるんです。でも、いざひとりの時に何をしたらいいかわからないし、難しい動きは出来ないし。それで、個人で講習を受けに行こうと思ったんです。
――講習を通じて、ご自身はどう変わりましたか?
意識がすごく変わりました。技術の習得はもちろんですが、指名本数も、きちんと目標を立てて頑張ろうって思えるようになりました。
――今までは、そのような目標設定はしていなかったのですね。
はい。この仕事って体力も使うし、決してラクではありません。でも、さくら先生に「どうせやるなら、楽しく仕事をしよう。そして、結果を残せるくらい頑張ろう」って言われたんですよ。
なんて素敵な考え方をする人なんだろうと思いました。
――なるほど。辛い、キツイ、と思わずに「同じやるなら、結果を出すために頑張ってみる」。すごくいい考えですね。指名本数はどのように目標を立てていくのですか?
先月の自分は常に超えたいと思っていて。どうやって達成できるかを先生と考えていきます。具体的には、常連の方や、SNSからの予約状況などから目標数値を決めます。こちらから連絡をする際のポイントなども教えていただきながら、達成可能かつ高い目標を立てていく感じですね。
「次に会うのを楽しみにしている」は期待の言葉
――以前に比べ、マ〇ト技術はどの程度進歩したと感じますか?
今まで「マ〇ト苦手なの?」とお客様に言われたくらい下手でした(苦笑)。それが今では「こんなに気持ち良くて楽しいマ〇トは初めて」とか「かんなちゃんのマ〇トは何回受けても気持ちいし、楽しい」と言われるくらいまで成長しました!(笑)
――すごい!それは嬉しいですね。
今まで私は何をやっていたんだろう、って思います。できない時代から見てくれているお客様には「成長したね」って褒めてもらえるようになったんです。「次に会うのを楽しみにしている」は、期待してくれている証拠。モチベーションも上がります。
――先ほど、さくら先生の考え方に感銘を受けたとお聞きしましたが、実際はどんな方でしょう?
すっごく優しいですね。落ち込むことがあった時も、頼りがいがあるというか甘えられる存在。それでいて、ダメなことはダメと言ってくれる。相手の気持ちに適切に応えてくれる方ですね。
――かんなさんは、さくら先生が受け持つ最上級クラスの講習ですよね。すみれ先生との面識は?
すみれ先生とは合同講習でお会いしたくらいです。でも、すみれ先生も、すごく印象的でした。明るくて面白い!たくさん共感してくれて、悩みの相談に関しても「私だったらこうするかな」と同じ目線で合わせてくれる優しさがありました。
――将来の夢や、目標があれば教えていただけますか?
まずは憧れの「プラチナクラス」にレベルアップすること。それが達成できた後は、少し出勤を減らして自分の資格取得の時間に充てたいんです。そしてたくさんの経験を積んだうえで、私もさくらさん・すみれさんのように「先生」になりたいです。でもまだ年齢も若いし、まだまだ先のことですけど。
あ!ちょっと目標の意味合いが違うかもしれないんですけど、絶対に載せてほしいことがあるんです。
――はい、何でしょう??
一生に一度しか遊びに来れないお客様も多いじゃないですか。そんな方の心に残り続ける女の子になるのが目標なんです。「あの子、かわいかったな」「面白かったな」でも何でもいい。ふとした時に、思い出してもらえる女の子になりたい。
そう考えながら、一生懸命接客をしているということを伝えてもらえたら嬉しいです。
- さくらから見た「かんなちゃん」
- 出会った時は、マ〇トが全く出来なかったのに、今では最上級のクラスを受けるまでに成長しました。素直に物事を受け止めることができ、勉強熱心。講習ではたくさんの資料を渡すのですが、かんなちゃんは必ず資料を熟読し、次回の講習では出来なかったことを出来るようにしてくるんです。決めた目標の常に上を目指す努力家です。