- 新宿サンキュー うたこ
- 愛媛県出身。現在、性別適合手術をするための資金を稼ぐため、昼は会社員、夜と休日はニューハーフデリヘル嬢として勤務。元々は、幼稚園教諭だったが「男の先生」としていることが次第に窮屈になり退職。周囲からの情報が増えるにつれ、今までぼんやりと感じていた「心と体の不一致」を確信。女性ばかりが在籍するデリヘル「サンキューグループ」で、ランキング1位を獲得する人気嬢。好きな食べ物はメロンパン。モットーは「やらない後悔よりやる後悔」。
この記事は「後編」です。
前編では、男性として生きていく中での息苦しさを感じ、トランジェンダーとしての自覚をするまでの経緯、手術をしようと決意に至った話を語ってくれたうたこさん。多くの困難もあるなか、夢の実現に向け、前だけを見据えて着実に進んでいる。
前編はコチラ
>>夢を現実に。私は女性として生きていく|新宿サンキュー うたこ~前編~
本職帰りの平日、そして土日。ほぼ毎日の出勤も苦にならない
昼間、正社員として定職についていますが、都内でひとり暮らしとなると、そこまでの貯金ができません。
手術費用を稼ぐため、何とか早く貯金ができないか、と考えていた時、「もしかしてここなら働けるかも」と友人が教えてくれたのが、激安風俗グループの『サンキュー新宿店』。私がニューハーフということも分かったうえで採用していただきました。当時はニューハーフの風俗店があるなんて知らなかったんですよね。
まさか普通の風俗店で働けるとも思っていなかったので正直とまどいもありつつ、これで貯金ができる!と嬉しくもあり。
風俗のお仕事は、平日は会社が終わってから早朝まで。そして、一度帰宅してまた会社に出勤。睡眠は待機中に(笑)。土日もなるべく出勤していますね。もちろん大変ですけど、せっかく採用していただいたし、今が頑張り時と思っています。
男性も女性も、私を「女の子」と思って接してくれるのが嬉しい
おかげさまでサンキュー全店の中で、ランキング1位となっていますが、プレイ料金は店名のとおり3,900円。激安店とはいえ、やはり在籍が女性ばかりの中で、ニューハーフと遊んでみようという方は希少です。
お店のHPには「ニューハーフ」と書いてあるのに、その言葉自体を理解していない方もいらっしゃるんですよね。ホテルで会った時に、「男と遊びたいわけじゃない」と激怒されることも。そう言われても辛いし、お店に事情説明の電話をしているときの気まずさといったら…(苦笑)。
逆に、最初は単なる興味本位で来ていただいたお客様が、リピートしてくださるのはすごく嬉しいですね。それも、次第に本当の女性と思って接してくれるようになって。幸せな時間です。
実は女性のお客様も多くて、3分の1は女性かな。ほとんどが同業の女の子ですね。ニューハーフの人気嬢と聞くと、ものすごく女性らしい接客をしていると思われるようで、お仕事で参考にしたいというケースが多いです。
でも、特段、女性らしいことってしてないと思うんですよね。ちょっと天然っぽいドジなところもあるからか、「癒される」とはよく言われますね(笑)。一緒にお話したり添い寝したり、それはそれで楽しいひと時を過ごしています。
多くの苦労がつきまとうけれど、前を向いていくしかない
「性別適合手術(性転換手術)」って、すごく高額なんです。2018年から保険が適用になったのですが「過去にホルモン剤を投与したことがない」という条件があって。トランスジェンダーにとってホルモン剤は本来、欠かすことのできないもの。それが適用の除外項目に入ってしまっては、保険で手術を受けることができません。
この手術をすると戸籍上、性別を変えることが可能になるんですよ。その他にも、声帯の手術もして、女性らしい声になりたいし、豊胸もしたい。目指す女性像になるには、数百万は必要ですね。
あまりピンとこないかもしれませんが、ニューハーフは一般社会で稼ぐことがすごく難しいんです。自分の性自認を隠して働くか、正面から受け入れてくれる企業を探すしかありません。それだけでも大変なのに、そこからさらに、高額な手術費用を稼ぐには、風俗やAV出演くらいしか選択肢がなくて。
私は稼ぐための手段として、風俗を選びました。幸い、いいお店にも巡り合えました。いつか目標額が達成すれば卒業をしますが、その時に、風俗で働いたことを後悔しない自分でありたい。できることなら、風俗で働けたことに感謝をして、誇りが持てるくらいに。
まだまだ先は長いけど、「女性になる夢」を必ず叶えます。一度きりの人生なのに、男性と、女性、ふたつの性が楽しめるなんて、ワクワクしますね。
覚悟を決めた日から、恐れるものは何もありません。
『新宿サンキュー』うたこ
取材・撮影協力「新宿5丁目スタジオ」
「新宿5丁目スタジオ」の代表は女装家の大河内結香(おおこうちゆいか)さん。うたこさんが数年前に入っていた劇団で舞台監督をされていた方で、今回、うたこさんの取材・撮影に伴いスタジオを提供していただいた。ここは女装を楽しむ人、LGBT、そして一般の人たちとのコミュニケーションスペース。様々なイベントを通し、お互いの理解を深めることで、性別や見た目で区別されることのない社会を目指している。