2025年3月22日(土)、都内イベントスペースにて、「夜職(よるしょく)サミット 2025春」が開催されました。
今回のテーマは
「脱がずに生きる」
~元ソープ嬢と元セクシー女優が教える
「自分らしいセカンドキャリア」のつくり方~
- 「夜職サミット」ってなに?
- 「多彩なゲストと共に、性風俗や水商売など、いわゆる「夜の世界」で起こっている様々な問題を語り合うトークイベント。
「夜の世界と社会をつなぐ。」をテーマに、毎回、夜の世界で起こっている課題を社会に発信し、昼夜問わず、つながる場を作っています。
このイベントは、夜の世界の問題に関心のある方であれば、年齢・性別・職業・地域を問わず、どなたでも参加が可能。
毎回大盛況で、今回も業界内外から30名を超える参加者が集いました。
主催は、夜の世界で働くリスクの最小化に向け尽力される坂爪真吾さん。
坂爪さんといえば、風俗で働く女性の無料相談窓口「風テラス」を立ち上げた方。
現在は風俗をはじめ、夜職従事者向けのサポートAIを開発する団体「YOLUMINA(ヨルミナ)」の法人化を進めています。
ゲストは元風俗嬢・元セクシー女優のおふたり
今回のゲストは
元ソープ嬢で現在は色街写真家として活躍する紅子(べにこ)さん。
元セクシー女優で、現在はフリーライターとして活躍するたかなし亜妖(あーや)さん
- たかなし亜妖
- 2016年にセクシー女優デビュー。女優生活2年半で引退を決意し、ライターへ転向。
現在は鳥越アズーリFM「たかなし亜妖のモザイクストリート」で冠番組を持ち、J-CASTニュースやまいどなニュースなどあらゆるメディアで活躍中。
日刊SPA! たかなし亜妖 記事一覧
おふたりから「脱いでいた過去」から「脱がない現在」に至るまでの経緯や、セカンドキャリア形成についてのお話しを聞かせていただきました。
私が『脱がずに生きる』までの物語
今回のゲストは、元風俗嬢と元セクシー女優。
お仕事内容は違えど、おふたりとも「脱ぐ仕事」を経験しています。
夜職サミットの第一部は、ゲストトーク。
- ゲストトーク内容
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- 「脱ぐ仕事」を始めたきっかけ
- 「脱ぐ仕事」をやめようと思ったきっかけ
- 「脱がずに生きる」ために、どのような困難があったか。
- それを乗り越えるために、どのような努力や挑戦、工夫をしたか
それぞれの人生について、当日語っていただいた内容を抜粋してご紹介します。
いじめられた過去。裸になれば受け入れてもらえるかもしれない
紅子さんは、小さな頃から受け続けていた壮絶ないじめ体験を告白。
「こんな私でも裸になれば受け入れてもらえるのではないか」と19歳でピンサロデビューしたのが風俗入りのきっかけ。
決して売れっ子だったわけではなく、お店を転々として最後は吉原へ。
32歳になり、体力と気力の限界を感じ、引退。
その後、結婚出産をしたのですが、お相手に「好きな人ができた」と離婚を切り出されてしまいます。
なんという悲運…。
紅子さんが、いざ働こうと思った時に、目の前に立ちはだかった困難は「字が書けない」ということ。
高校を中退し、勉強をろくにしてこなかった。
漢字がわからない、平仮名もまともに書けない。
当然、PCなど使えない。
ハローワークに行って「何ができますか?」と聞かれても、何もできない自分。
そこから文字を書く練習をし、職業訓練所に通い、最低限のPCスキルを習得したと言います。
売れていた人ほど「戻らない」強さが必要
元々、アダルトの世界に全く偏見がなく、アダルト=サブカル的な感覚で捉えていたという亜妖さん。
面白そうという単純な理由でセクシー女優の道を選んだものの、業界は弱肉強食の競争社会。
やる気にあふれた新しい子が入って来るのを見て「こんな子たちのなかで勝てるわけがない」と思い、あっさり引退を決めたそう。
ゲーム会社でアルバイトを始めましたが、周りの友人たちは就職をして、落ち着き始めた年代。
「フラフラしていちゃダメだな、辞めないようにしないと」。
仕事内容よりも、ひとつのことを根気強く続けることへのプレッシャーを感じたようです。
セクシー女優にしても、風俗嬢にしても、夜の世界で働くと、その後、一般社会になじめず「出戻り」をしてしまう人はたくさんいます。
亜妖さんの考え方は
「売れている人であれば、戻れば歓迎される。
だから売れている人ほど、芯を強く持たないと、また戻ってしまう。
私の場合は売れていなかったんで(笑)。需要がないので、そこに戻ることは考えませんでしたね」
「自分らしいセカンドキャリアの作り方」とは
第二部は座談会。
具体的に「セカンドキャリア」をより掘り下げた内容でのディスカッション。
- ディスカッション内容
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- 夜職女子が自分らしいセカンドキャリアを実現するために必要な条件とは?
- 自分らしいセカンドキャリア実現の妨げになっているものとは?
- 「脱ぐ仕事」をしていたことを、オープンにするべきか、しないべきか
- 「結婚(専業主婦)」というセカンドキャリアはあり?
- 夜職女子が自分らしいセカンドキャリアを実現するために必要な社会的支援とは
- 夜職女子のセカンドキャリアの選択肢、その過去・現在・未来
- 「脱がずに生きたい」と考えている夜職女子への応援メッセージ
紅子さんの場合
紅子さんの写真は飛田新地(組合)のカレンダーに採用された
紅子さんは、子育ても落ち着き、子どもが中学生になった頃、パートで事務職をしていました。
「食べてはいける。でも、何も残せないまま終わってしまうのかな」と考え、写真を撮り始めたそうです。
その写真とは、全国各地の色街の風景。
自分が働いた吉原。遊郭や赤線跡地。
「風俗は、今でも忘れたい過去。でも、形がなくなる前に、歴史を残しておきたかった。そして自分の生きてきた証として」。
それらの写真が噂となり、写真集出版のためのクラウドファンディングで集まった金額はなんと820万円を越えたのです。
最近では飛田組合2025年度カレンダーにも紅子さんの写真が採用されたそう。
紅子さんのセカンドキャリアは、忘れたい過去と、忘れてはいけない歴史がクロスしていました。
亜妖さんの場合
一方、セクシー女優からライターに転向した亜妖さん。
メディアの連載やFM放送の冠番組を持つなど、紅子さん同様、「脱がないセカンドキャリア」への方向転換が、大成功。
たまたま文章を書くのが好きで、好きなことをしたら「元セクシー女優」という珍しい職業を面白がってもらえて、注目度はあがったそう。
聞こえは悪いかもしれませんが、その過去が良いステップになったともいえるでしょう。
亜妖さんの言葉で最も印象に残ったのは、卒業後の進路について、悩んでいる女の子に対してのメッセージ。
「何をしたらいいかわからない。自分は何もできない、という人は多いですよね。でも、不特定多数の人を相手にして、楽しませてきて、自立して稼げて来たことに自信を持つべきです。
それだけたくさんの人を見てきた経験値は絶対にプラスになる。
少しでもやりたいことが見つかれば、きっとパワフルに突き進むことが出来ると思うんですよ!」
確かにその通り。
この言葉に勇気をもらった女性も多かったのではないでしょうか。
イベントを終えて
今回の夜職サミットに参加したのは、現役風俗嬢だけでなく、すでにセカンドキャリアを突き進む女性や、店舗関係者、風テラスの相談員、福祉関連職の方など、多岐に渡りました。
トークイベント終了後は、参加者同士の交流もあり、皆さんの来場目的を聞くことができました。
大学で福祉を学んでおり、実情を知るために来た、という女性も。
主催の坂爪さんからのメッセージ
夜の世界を卒業して、昼の世界でセカンドキャリアを作るための方法や道のりはたくさんあり、正解や不正解があるわけではないと思います。
今回のサミットを通じ、ゲストの方々のお話、会場での質疑応答や交流が、夜職で働いている人たちにとって「自分らしいセカンドキャリア」をつくるためのヒントやきっかけになれば、とても嬉しいです。
参加者からのこの言葉こそ、夜職サミットを開催した意義と言えるでしょう。
このような“性”がテーマのイベントに参加することに勇気がいりましたが、とても有意義な時間を過ごすことができました。
夜職1本の私にとって、少し社会とつながれた気がしました。
夜職サミットは年2回開催。
ぜひ興味のあるテーマを見つけて、参加してみてはいかがでしょうか。
どうしたら脱がずに生きて行けるのか。坂爪さんの新刊「風俗嬢のその後(ちくま新書)」