2025年1月15日。
講談社からまりてん初の自叙伝「聖と性 私のほんとうの話」が発売されました。
めでたい!と思った矢先、その2日後の1月17日、まりてん本人から、現役引退(2025年6月末)が発表されました。
ミスヘブンで全国の頂点にも立ち、今なお予約困難。
そんな「日本一売れている風俗嬢」の、突然の引退宣言に驚いた方も多いと思いますが、現役に関しての未練はなく、“やりきった”そう。
とはいえ、まりてんの顔は「風俗嬢」だけに留まらず、YouTuberであり、クリエイターであり、エンターテイナー。
現役嬢を辞めても、今まで同様、業界を盛り上げていく女性であることに変わりはありません。
さて、今回は、話題の自叙伝の出版秘話から、今後のビジョンについてインタビュー。
宗教二世、サタン、セフレ、詐欺、デリヘル店開業、自殺未遂、‥‥パワーワードが凄すぎてそれだけでも興味深いのですが、風俗で働く皆さんに注目して欲しいと感じたのは、接客への向き合い方。
インタビューは前編・後編の2本立て。
この本の面白さ、そしてまりてんの「人間味」を多くの皆さんに伝えられると嬉しいです。
(以下、画像出典:講談社)
会えなくても、ずっと見てくれていた数年前のお客さん
――まずは発売おめでとうございます。Amazonではベストセラーになっていますが、率直な感想を教えてください。
発売までの準備期間、この1年弱が、かなり辛くて(笑)
YouTubeの撮影、企画、現役嬢としての出勤などに加えて執筆。夏頃は「もう忙しくて死にそう」という状況でした。
緊張から胃痛に悩まされる日もありましたが、こうして発売されて、反響もたくさんいただいて、今は嬉しい気持ちでいっぱいですね。
――書店の平積みにも驚きました。
そうなんですよ。一度も本を書いたことのない人が、いきなり平積みって結構すごいことらしいです。
みなさん、この本が書店に並んでいる写真を送ってくれるんですよ。
並んでいる場所がサブカルとかアングラ系ではなく、タレント本とかフォトエッセイのところで。それにも驚きでした。
――書店でのサイン会というのもすごいですよね。実際はどんな方が来ていましたか?
馴染みのお客さんもいれば、驚いたのが風俗で働く女の子が、お客さんとのデートで書店に来てくれたこと。コースの外出枠を使ってサイン会に並ぶっていう(笑)
あとは、昔、デリヘル店「サイドライン」を経営していた頃のお客様が来てくれたのも嬉しかったですね。
「〇年前に会ったことがあるんです」と言われて、「あぁ!」みたいな。
――それはかなり嬉しいですね。
そうなんですよ。この方だけでなくても、出版を機に連絡をくれた方も結構いて。
何年も会っていなくても「ずっと遠くで見ててくれたんだな」って。
風俗の仕事をしていると、お客様が離れていくのは当たり前。
「嫌われたのかな」「他に行ったのかな」と思いがちだけど、決してそれだけじゃなくて、それぞれ事情があったりするんですよね。
――まさに本書でも書いてありましたが、5年後、10年後に「いい関係だった」と思ってもらえる接客を目指していたまりてん。
それを現実として、感じることができたわけですよね。すごく素敵だなぁ。
風俗の仕事を始めた頃から、ずっと変わらないのですが、お客さんから「お金を使って無駄だった」「風俗の帰り道って虚しい」と思われない接客を心がけていました。
いつも「あたたかい気持ちでお家に帰れますように」と思いながら、お別れをします。
時が経っても「あぁ、あんな風俗嬢いたな」って、思い出してくれたら嬉しいですよね。
ダメなところを見せ合せるのは、コミュニケーションのひとつ
――本の売れ行きはかなり好調のように見えますが、今現在、具体的に販売冊数は出ているんですか?
実際の販売数というのは特に教えてもらっていないんですよ。
ただ、当初、初版で印刷する予定だった数が3000冊だったんですが、そのあと5000冊に増やしたと聞きました。発売前の動きから、意外に売れると思ってもらえたのかなと(笑)
――そもそも自伝本を発売しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
いろいろなところで過去の話をするなかで、一旦、自分の棚卸し的な意味も含めて、本を出したいなと思ってはいたんです。
それと、もうひとつの理由は、等身大のまりてんよりも「すごい人」「成功者」「なんでもできる人」と過大評価されている気がして。
いやいや、私も今まで失敗もたくさんしてるし、今もダメなところだらけだし。
その「ダメな部分」を思い切りさらけ出したかったんですよね。
「私のダメなところを見せるから、あなたのダメな部分も見せて欲しい」みたいな(笑)
――相手に構えないで欲しいということですかね。心を解放してもらう感じ?
そうですね。
お互いにマイナスな部分をさらけ出せる関係が理想なんです。
これって、人と対峙するときのコミュニケーション手段のひとつだと思っているので。
いわば前戯。そう、この本は前戯ですね(笑)
――ということは、やはりこの本は、お客様に向けて書いたもの?
はい。最初はお客様に向けて書いた本でした。
ただ、書いていくうちに、同業の女の子たちに読んでもらいたいと思うようになっていました。
私も辛かった時期はたくさんあって。20代、本当に辛かったんだよ、って(笑)
――苦難にしても、接客への考え方にしても、女の子に響く部分はたくさんあると思いました。
私は決して順風満帆だったわけじゃなくて、事業に失敗するし、人に騙されたし、ビルから飛び降りたこともある。
でも、風俗って、自分の思う方向に舵をとっていける自由業なんですよね。
失敗しても、また戻ればいい。
今振り返って言えることは「あれはダメ」「これは向いてない」って周りが言ったとしても、まずは自分が思った前へ進んでみればいいんじゃないかな、って。
――自由業だからこそのメリット。縛られないからこそ、自由な発想で突き進む。なるほど、共感します。
まずは前に進んでいくことが大事な気がします。進まないと何も始まらないですから。
実際に読み終わった女の子から「勇気が出た」とか「この仕事を選んだ自分を恥じなくていいんだ」といった前向きな感想がもらえて、すごく嬉しいですね。
付き合ってもいない、ましてや今日初めて出会った男女がいきなり密室で裸になるようなこのお仕事を理解でない人がいて当たり前だと思っています。誰にでも働くことをお勧めできるお仕事でもありません。 ただ私は、「自ら選ぶはずがない」と言われるこのお仕事を楽しんでやっている人間も中にはいるよって、表明したいのです。
誰かを救うとか、変えるとか、私には出来ない。 だけど、もしひとつだけ願うとしたら、「きっと嫌々接客しているんだろうな」と思っているお客様の気持ちを変えたい。
後編へ続く